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※記事内の写真はすべてイメージです

ひとり親家庭でこどもが不登校になったらどうする?
学校に行きたがらないこどもとの向き合い方

栃尾江美さん

“登校をしぶるこどもを無理に学校に行かせないほうがいい”という昨今の風潮や、親としてこどもを守りたい気持ちがある一方で、生活のために仕事をしなければならないし、こどもを長時間家でひとりにするわけにもいかない――。不登校のこどもを持つひとり親は、八方塞がりの状況にどう向き合い、整理していくのがよいのでしょうか。自身がシングルマザー時代に、こどもの不登校と向き合った経験を持つライターの栃尾江美さんが、当時を振り返りつつ考えました。

あだ名がきっかけで「行きたくない」。解決しても次から次へと……

こどもが不登校になったころ、私はライターとして在宅勤務で働いていました。当時は結婚しており、夫は会社員でした。

長男は、3年生の夏休みから学童へ行きたがらなくなりました。きっかけは「あだ名でからかわれる」こと。先生に相談し解決しても、次から次へと別の「嫌なこと」が発生し、そのたびに行きたくなくなります。本当の理由はわかりませんでした。

2学期になり学校が始まっても、やはり行きたくないままです。同時に、保育園の年中だった次男も「行きたくない」と言い始めました。もともと登園渋りが激しかったのですが、保育園では楽しそうにしていると聞いており、次男も理由ははっきりとわかりません。

最初は、登校させようと躍起になりましたが、肩を落としてトボトボと歩いていく後ろ姿を見て、夏休み明けに命を落としてしまうこどものニュースを思い出したのです。「最悪の事態だけは避けなければ」と、2学期の2日目に「行かなくていいよ」と言いました。その時の長男の、安堵した表情は忘れられません。

こどもの不登校が直接の原因ではありませんが、その後、夫と夫婦関係を続けられなくなり、こどもがそれぞれ小学4年生と年長の時に別居し、1年後に離婚することになりました。今は再婚しましたが、別居とシングル合わせて2年間ほど、こどもと私の3人で暮らしていました。

自分の心を整えないと、こどもと向き合うのは難しい

こどもが不登校になった当時は情報もサポート体制も乏しく、とにかく不安でしかたがありませんでした。ただ、不安な気持ちの要因を探ってみると、自分自身も間違って認識している場合があると気づきました。

例えば、「勉強が心配だから学校に行ってほしい」という気持ちの裏側には、「『育て方が悪い』と思われるんじゃないか」という不安があったりします。私自身、自分は悪くないと思いたくて学校のせいにしたり、社会のせいにしたりもしました。

さらに、「こどもの将来が不安」という思いの根底には、「『子育てに失敗した』と思われるのが恥ずかしい」という気持ちがあるような気がしました。「仕事相手に迷惑を掛けられない」という正義も、実は「自分の評価が下がることに耐えられない」という気持ちが強かったのだと認識しています。

「私がどう見られてもいい」と思うほど達観するのは難しいものですが、自分の本当の気持ちがわかると、「自分の体裁や評価を抜きにしたら、こどもにとって何が大切か?」と切り分けて考えられるようになります。それだけでも、迷いが減るのではないかと思います。

学校へ行ってほしい気持ちはありましたが、こどもには「行かなくていい」と伝えていました。当時、長男は「死にたい」と何度か口にしていたのもあり、もっとも大切なのは命だと考えたのです。本人が強い罪悪感を覚えていたので、「学校へ行かなくてもあなたの味方だよ」というスタンスを取りました。

一方で、「学校へ行く」選択肢をなくすのも不安が残ります。そのため、学校の先生には「待ってるよ」と言ってもらうなど、バランスをとるようにしていました。登校状況は時期によって異なりますが、スクールカウンセラーのいる相談室に週1で通ったり、教室に途中から行ったりしました。こどもの気持ちが変わった時にいつでも行けるよう、学校とのつながりは途切れないように心がけました。

自宅でのゲームにもメリットがある。笑顔をバロメーターに

こどもがずっと家にいると、ゲームや動画ばかりになりがちです。我が家は不登校になるまでゲームの時間をかなり制限していたのですが、さすがに解禁しないと自分の仕事の時間が取れません。また、ゲームは不登校のこどもの逃げ場であることもあります。

毛嫌いするのではなく一緒に遊ぼうと考え、私もマインクラフト(3D仮想空間に立体ブロックを組み合わせて建物や街を自由に作れるオンラインゲーム)などのゲームに加わると、こどもは喜びました。次男は手取り足取り操作法を教えてくれて、長男はぐいぐいと自分の思うとおりに進めていきます。そんな特徴を普段の生活で見たことがなかったので意外でした。一緒にやらないときも、仕事机のすぐそばでゲームをしているので会話が聞こえ、それぞれの性格がよりわかります。こどもの特徴を知ると、外へ出るきっかけとしてイベントなどに誘うときにも、こどもに響きそうなことを選択できるようになります。

いつだって、自分の選択には迷いがつきものです。特にひとり親だと、間違った方向に行っても気付かない可能性があります。そのため、私はこどもの笑顔をバロメーターにしました。こどもがゲームばかりしていても、「食卓やお風呂で一緒に過ごすとき、笑顔で仲良く話せれば大丈夫」と考えていました。冗談を言って笑わせたり、こどもの話をなるべく聞いたりするなど、とにかく笑顔でいてくれるよう心がけました。

仕事相手や託児サービス、コミュニティに助けられた

不登校になってすぐに困るのは、親の仕事ではないでしょうか。私は幸いにも在宅勤務の多い仕事でしたが、取材や打ち合わせで外に出ることもあります。やむを得ず出かけるときには、自治体のファミリーサポートや、民間のシッターサービスを利用しました。

初回は顔合わせをして、顔見知りになってから預けるプロセスを踏んでいましたが、2度目からは初めての方にもそのままお願いするようになりました。在宅勤務の友人夫婦に預かってもらうこともあり、とても助かりました。

仕事によっては連れていく場合もありました。今は当時に比べると、理解が広がっていると感じるので、会社員の場合は会社に連れていけるか相談したり、リモートワークを打診してみたりするとよいと思います。

私自身の心の安定を支えてくれたのは、いくつかのコミュニティです。ひとつは、ママさんバレー。こどもが不登校でも学校の情報を得られるし、こどもも連れていって体育館で遊ばせていました。学校へ行かなくなって運動不足が心配だったので、多少動いてくれるだけでもありがたかったのです。

また、私は大人の友だち作りのようなオンラインコミュニティに入っていました。そこでこどものことを相談したり、励ましてもらったりしてずいぶん心が落ち着きました。イベントも多かったので、そこにもこどもを連れていきました。ひとりで二人のこどもを連れていくのは大変でしたが、「学校での経験がない分、学校ではできない経験をさせたい」という気持ちが強かったのだと思います。特に、泊まりの合宿ではたくさんの人と触れ合えて、こどもにも楽しい時間だったようです。周囲の方がとても協力的で、本当に感謝しています。

仕事を増やした分、こどもたちにも協力してもらう

夫と別居してからは、経済的な責任が付いてまわります。フリーランスは自分の頑張り次第で収入が増えるため、まずは仕事を増やしました。自宅にいるとはいえ、夜遅くまで仕事をしなくてはならないので、こどもにも「ママ頑張ってるから、協力してね」などと伝えていました。

寝不足が続いてどうしてもつらいとき、夕飯を作ってからこどもに「○時まで仮眠をとるから、それまでに食器を洗ってお風呂に入っておいてくれない?」と頼んだことがあります。普段は食器も洗わないし、なかなかお風呂に入らないのですが、その時は私が起きる時間までにしっかりと終わらせてくれました。「とても大変で困っている」と伝えれば、協力してくれるのだ、と感じてとてもうれしかったのを覚えています。ただ、ピンチの時にしかやってくれませんが(笑)。

家の手伝いや自分のことは「~しなさい!」ではなく「~してくれない?」と言うなど、伝え方のトーンに気をつけています。「食べた食器を片付けて」と言っても、最初は「やだよ~」と逃げたりしていましたが、毎日同じトーンで言い続け、3週間後にようやくできるようになりました。長い道のりですが、怒鳴って険悪になるよりも、私には合っているようです。

私が大切にしていること3つ「+α」

今では、息子たちは中3と小5になり、いろいろな意味で成長しました。他の多くのこどもたちのように学校へ行っているわけではありませんが、長男は別室登校をしており、次男はフリースクールへ通っています。高校にはいろいろな選択肢があると知ったので、不安も和らぎました。

いま、不安になっている方の参考になればと、私が大切にしていることを3つ紹介します。

1つ目は「自分の気持ちを知る」。前述したように、自分が感じている“不安の正体”を明確にするようにしています。突き詰めて考えてみると、「誰かから○○だと見られたくない」という不安がほとんどです。取るに足りないことと思えれば一番良いですが、そこまで思えなくても認識できるだけでずいぶん不安が弱まります。

2つ目は「こどものゴールを決める」。こどもが不登校になると、「進学どうしよう」「就職どうしよう」と先のことばかり不安になりますが、私は「息子が今も将来も幸せに生きる」をゴールに考えています。そのための最低限の自立は不可欠でしょう。でも、例えば大学へ行かなかったとしても、自立して幸せになる道はたくさんあります。「○○ができないと将来まずいんじゃないか」と不安になっても、ゴールから逆算していけば不安が軽くなります。

3つ目は「相談できる相手を持つ」です。ひとり親の場合、相談できる大人が家族内にいない場合があります。最近はいろいろなサービスがあるので、自分に合った相談先を見つけられるとよいと思います。私の場合は、「不登校児の親のコミュニティや友達」「通っている児童精神科の先生」「オンラインの相談サービス」などに適宜相談するようにしています。本当に迷った時だけでなく、ちょっと話を聞いて欲しいとき、イライラするときなどにも効果的です。

最後に、プラスαとして「親自身の楽しみ」も持っていただきたいです。私にとっては、オンラインコミュニティやバレーボールでした。自分を大事にするからこそ、こどものことも大事にできるのだと思います。楽しそうな大人の姿を見せることが、こどもが将来に期待を持つためにも、大切だと考えています。

栃尾江美さん
株式会社writeln(ライトライン)代表取締役。6年のシステムエンジニアを経て、ライターへ転身。現在は主にIT関連や働き方、子育て、ライフスタイルなどのインタビュー記事を執筆。こどもが不登校になったのをきっかけに「ゲームdeコーチング」のサービスも提供。

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