(写真はいずれもイメージです)
パートナーとの離婚や死別などでひとり親になったとき、「新しい生活に慣れるだろうか」「こどもを一人で育てていかなくては」といったプレッシャーに悩む人も多いのではないでしょうか。そんなとき、仕事や子育てを軌道に乗せているひとり親当事者の話は、大いに参考になるはずです。そんな“先輩”たちに、ヒントに満ちた経験談をうかがいました。
――ひとり親家庭になった経緯を教えてください。
夫の実家で、夫の両親と同居していましたが、生活スタイルや価値観の違いから、日々の暮らしに苦痛を感じるようになりました。長女が中学校に、次女が小学校へ入学するタイミングで離婚しました。
娘2人と息子1人のこども3人を抱え、まずは自分の実家に戻りました。疲れきった精神面を整えることと生活の基盤作りに集中するためです。3年後、私の就職の関係もあり、実家から出て他県に移り、家族4人で暮らす現在の生活に至ります。
――現在はどのような生活ですか?
介護職に就いていて、平日と週末に1日ずつお休みをいただいています。仕事は忙しいのですが、できるだけこどもと一緒に過ごす時間を確保するようにしています。休日は丸一日、平日も朝と夜は必ず家族だんらんの時間を作っています。
――ひとり親向けのサポートは活用しましたか?
離婚前に住んでいた自治体は、子育てやシングルマザー向けの支援に力を入れていました。こどもが学校に行っている間に、本当に離婚した方がいいのかなど、その時に抱えていたさまざまな不安を相談しました。
ただ、離婚後にどうやって生活していくのか、その道筋をつけるのは自分自身です。その後は、ひとり親家庭を支援する団体にお世話になりました。そこでは、ひとり親の家庭が生活していくための情報が手厚くそろっており、子育て、住まい、仕事などさまざまなことを相談しました。
前向きでパワフルなスタッフが多く、相談しているうちに不安がどこかへいってしまうくらいで、未来を考えることがだんだん楽しくなりました。「あなたなら出来るよ!」と背中を押してもらえて、自然に「私、頑張れるかも!」と思えるようになりました。
――お仕事はどのように探したのでしょうか?
現在の勤め先も、その団体に紹介してもらいました。ひとり親であること、こどもが3人いることなどを考慮していただける職場に出会えたのは、団体スタッフのみなさんのおかげです。
「介護分野就職支援金貸付事業(※)」も利用しました。介護職に再就職した場合、就職の際の支援金として最大20万円が支給される制度です。しかも2年以上継続して介護職に就いていれば、返還免除になります。すごく助かりました。
※ 厚生労働省の事業。詳細はこちら
――今までで最も大変だと感じたことを教えてください。
離婚した後は、生活環境が大きく変わります。私もこどもも、そこに慣れるまで苦労しました。特に、離婚前後で住む自治体が変わると、学校の雰囲気も教育スタイルもがらりと変わってしまうので、こどもにとっては試練ですよね。
仕事を始めた私は、新しい職場になじめるのか、仕事についていけるのか、心配だらけでした。こどもだって、新しい学校でお友達作りに不安いっぱいだったと思います。でも少しずつ慣れていって、気がついたら「決断して良かった」という気持ちになっていました。
親の勝手なエゴなのでしょうが、実行しないで後悔するよりは、前に進んで良かったと思っています。
――逆に、最もうれしかったことは何ですか?
自分の収入でこどもを育てられていることです。いわゆる専業主婦だったので、その経験がありませんでした。専業主婦から脱するのは、すごく勇気がいるんです。もはや恐怖ですらあります。
だけど専業主婦って「私」がないんですよね。「○○ちゃんのママ」「○○さんの奥さん」。そんな生活を続けていると、自分が自分でなくなりそうでした。
だから勇気を出して、新しい一歩を踏み出してここまで頑張ってきました。自分の力で生活できて、こどもを旅行に連れて行くことができる。そしてその笑顔を見ることができる。そのことがうれしくて、自分に自信を持つことができました。
――ひとり親の方や、これからひとり親になる方への、メッセージやアドバイスを教えてください。
離婚して生活を大きく変えるのは、とても不安ですよね。でも、一歩踏み出してしまえば、取り越し苦労だったと思うはずです。壁にぶつかったとしても、解決策は必ず見つかります。そして、必ず誰かがそばにいてくれます。独りではないんです。
また、ひとり親生活を始めるために必要な情報を、どんどん集めてください。住まい、仕事、子育て支援などなど。ネットで調べたり、役所や民間の支援団体を訪ねたりするなど、方法はたくさんあります。そうした情報の一つ一つが、必ず次のステップにつながります。
悩む時間が長くなり過ぎると、どんどん怖くなってしまいます。思い立った時に、前に進みましょう!